衣類の加工について
新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、抗菌・抗ウイルスといった用語をよく耳にするようになりました。健康な暮らしを守るため、手軽に身の回りの清潔を保てるよう、細菌やウイルスへの感染対策グッズが増えてきています。
抗菌加工や抗ウイルス加工について、実際にはどんな効果があって違いは何なのかご存じでしょうか。
今回は、制菌・抗菌・抗ウイルス加工の違いについて説明していきます。
制菌・抗菌・抗ウイルス加工の違いについて
初めに、細菌とウイルスの違いを見ていきましょう。目に見えない小さな生き物という点では同じですが、生物学的には全く異なるものです。
細菌…大きさは1マイクロメートル程度で、細胞を持ち、適度な栄養・水分があれば自ら増殖することが可能です。
ウイルス…大きさは細菌の1/50程度。細胞を持っていないので、自分で増殖はできません。生きた細胞に寄生して、増殖していきます。
両者の大きな違いがわかったところで、次に加工の違いを見ていきましょう。
●制菌加工
繊維に付着した細菌の増殖を抑える加工です。「細菌」は黄色ブドウ球菌だけでなく、肺炎かん菌などの人体に有害な細菌も含みます。
そのため制菌加工は嫌なニオイの発生を防ぐだけでなく、有害な細菌の増殖も抑えるという優れた機能を持っているのです。
●抗菌加工
製品の表面上における細菌(黄色ブドウ球菌)の増殖を抑制する加工です。微生物の増殖による悪臭防止を目的としています。抗菌の及ぼす範囲は製品の表面に限定されており、一定時間持続し表面の細菌を増殖させないように加工されている製品を抗菌加工製品と言います。
●抗ウイルス加工
ウイルスを不活化させ、感染力を抑制する加工です。ウイルスの数を減少させることで製品を清潔に保ちます。一般のご家庭だけでなく、公共の場などの不特定多数の人が集まる場所の快適で衛生的な環境づくりにも役立てられています。
SEKマークについて
私たちは制菌や抗ウイルス加工について、何を基準に検討すればよいのでしょうか。
ユニフォームのカタログではメディカル系を中心に記載されている「SEKマーク」という認証マークがあります。このマークについて認証を行っているのが一般社団法人 繊維評価技術評議会です。
一般社団法人 繊維評価技術評議会とは
繊維製品の輸出振興の一環として品質向上、工業標準化法に基づく公示による認定検査機関としての業務、繊維製品品質表示規程やJISL(繊維)部門の改正等における調査、繊維産業の標準化事業及び国際標準化事業の向上発展に資するため、繊維製品に関する評価、標準化及びその推進すべき事業内容の整備拡充しつつ推進している機関です。
SEKマークについて
抗菌防臭加工を施した繊維製品の表示用語、評価方法・基準、安全性などに自主基準を設け、基準に合格した商品には「SEKマーク」を表示できるマーク制度です。SEKマークには、「抗菌防臭加工」以外にも「制菌加工」「抗かび加工」「光触媒抗菌加工」「抗ウィルス加工」「消臭加工」「光触媒消臭加工」「防汚加工」などがあります。
同じマークを基調にして、異なるカラーでそれぞれの用途や性能・効果を表しています。
SEKとは「Sen-i Evalution Kino」の略称で、(社)繊維評価技術協議会(Japan Textile Evaluation Technology Council)に由来しています。
SEKマークの評価基準は、ISO規格として国際標準化されています。
●抗菌防臭加工(水色)●
抗菌は、繊維上の臭いの原因菌である黄色ブドウ球菌などの細菌の増殖を抑制する、「抗菌防臭加工」が施された製品に付けられるマークです。汗や汚れを栄養源とする細菌が増殖を抑制することで、防臭効果を示し、靴下やタオルなどの衣類の嫌な臭いを防いでくれます。
抗菌防臭加工の試験方法は幅広い繊維製品に使用でき、JIS L 1902およびISO20743に制定され、国際基準になっています。
●制菌加工 一般用途(オレンジ)●
抗菌加工よりも強力な細菌抑制効果を持つ、制菌加工の品質および安全性を保証する認証マークです。繊維上の黄色ブドウ球菌や肺炎かん菌などの人体に有害な細菌の増殖を抑制し、これらの菌の減少効果も期待でき、衛生的な効果が高いと言えます。
オレンジは一般用途を意味しているので、一般家庭用や食品業務用の繊維製品を対象に付与されます。
●制菌加工 特定用途(赤)●
医療機関、介護施設、行政機関等が必要と認めて指定する業務用の繊維製品を対象として付与される制菌加工済みの認証マークです。制菌加工 SEKマーク(オレンジ)と大きく異なるのは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球)への抑制効果が認められていることです。そして一般用途(オレンジ)と同じように、肺炎かん菌や大腸菌といった人体に有害な細菌への抑制効果も認められています。そのため、医療・介護分野においても高い安全性を発揮します。
●抗ウイルス加工(黒)●
生地上の特定のウイルスの数を減少させる加工のことです。特定のウイルスとは、A型インフルエンザウイルス(H3N2)とノロウイルスの代替えとなるネコカリシウイルスです。どちらか、あるいは両方のウイルスの数を減少させる効果がある生地に「SEK抗ウイルス加工」マークが付与されます。
まとめ
衣類への加工があたりまえになってきましたが、現在会社で支給している制服はいかがでしょうか?
病院受付やカーディーラーなど、接客を伴う職場の制服で抗菌や抗ウイルス加工付き商品の採用が増えています。
環境に合わせて安心して仕事ができる機能を持った制服を活用し、働く人の健康を守りましょう。